つれて逃げてよー♬、ついておいでよー♪。矢切の渡しのメロディーのチャイムが流れる北総鉄道の矢切駅。虫記者がこんなところで下車して何処へ行こうというのでしょうか。いい歳して、愛の逃避行でもあるまいし。
実は、この駅の近くには、市川市の「水と緑の回廊」という、虫撮りのためにつくられたような散策コースがあるのです。
一度に全部回るのはしんどいコースなので、今回は半分だけに。まずは駅から10分ほどの「じゅんさい池公園へ」。モミジの紅葉が見事です。
池には、マガモ、カルガモ、オナガガモ、ヒドリガモ、キンクロハジロなどの水鳥が多いので、バードウォッチャーがたくさん来ていました。一度オオタカが飛んできて、人々はかなりの興奮状態になりましたが、結局オオタカは上空を旋回しただけで去って行きました。
ぬいぐるみのようにかわいいエナガの姿も多く見られます。
顔面が縞模様のシャクトリムシがいました。名前は不明です。
池の周囲のクヌギの木には、交尾中、産卵中のクヌギカメムシがいっぱい。カメムシは匂いで仲間を呼ぶのか、同じ場所に集合するケースが多いですね。この日も一本のクヌギに10匹ほどが集まって、愛の行為を繰り広げていました。
交尾中のカップルです。まさに矢切の渡しのシーンですね。切っても切れない、お尻でつながった究極の愛の形です。
産卵中の♀の姿を一度にこんなにたくさん見たのは、これが初めてです。やはり、出産シーンを見られるのは恥ずかしいのか、クヌギカメムシは、なるべく深い樹皮の割れ目を選んで、体全体を割れ目の中に隠すようにして産卵します。
この割れ目は特に人気のようで、すごい数の卵が産みつけられていました。生みの親は1匹だけではないでしょう。
卵には例の「毛が三本」的な突起。受精孔突起とか言う、卵が呼吸するための管みたいなものです。
樹皮の割れ目での産卵は、母親の密やかな愛の行為です。邪魔してはいけませんね。なんて言いながら、グイグイとカメラのレンズを近づけていく虫記者です。もっとよく卵が見たいと、母親にちょっかいを出したりも、してしまいます。
長くなってきたので、水と緑の回廊の続きは次回に。